ベジタリアンのせいじゃない
パンデミック以前は、ほぼ四半期に一度は他の社員たちと一緒に日本に行くのが普通だった。次がいつになるのか、そもそも次があるのかどうかもよくわからなくなってしまったが、これまでも、そして多分これからも、出張で一番アタマが痛いコトといえば、ラッシュ時の移動でも、訪問先との時間調整でもなく、もう圧倒的に食事。
先方がランチやディナーをセットアップしてくれるとき以外は、刻々と変わる予定を睨みつつ、会議中であろうとなかろうと、日本法人のアドミンとテキストで昼食と夕食の手配をするのがいつものパターン。なにしに出張してるんだか。
同行者の多くが何度も日本出張を経験しているとはいえ、VPやらGMやらを吉牛やココイチに連れていくのはさすがに気が引ける。一人だったら毎回そういうところへ行って、日本を満喫するんだけどな。
「ラーメン食べたい」 ― いいね!どこにしようか。
「お造り出してくれるとこない?」 ― いいけど、予算超えたらよろしく。
「戒律で豚肉がダメなんだけど」 ― そーか。じゃ、豚カツはやめとくね。
「アタシ、ベジタリアンなんだけど別に気にしないで」 ― ありがとう。じゃ遠慮なく。
「僕もベジタリアンだけど、鶏肉は食べるから」 ― それ、ベジタリアンじゃねーだろ…
実際、同行者の中に一人でもベジタリアンが混じっていると、ただでさえ面倒な状況が一気にフクザツになる。多くの場合、魚の出汁を使ってる店はほぼ全滅。つまり、和食には蕎麦屋も含めて行けないことが多い。ちなみにそれでも本人の強い希望で天ぷら屋さんに行くと(もちろん野菜天のみ)、天つゆがアウトなので図らずも塩だけで食べるという妙に通な食べ方に。
そんなこともあって、取引先主催のディナーがあるときはホントにホッとする。大抵、先方が気を遣ってくれて、「久しぶりの日本でしょうからお好きなものをどうぞ」と言ってくれるのだが、「ではお言葉に甘えて、セブンイレブンのおにぎりと、中華もしくは和風ドレッシングのサラダ。あと何でもいいのでコンビニスイーツと、最後ににアイスチョコモナカだけは忘れずにお願いします」などとは口が裂けても言えない、チキンなオレ。
そしてここでも、ベジタリアンがいると結局いつも精進料理っぽいモノに落ち着くことに。もちろんそれだってすごく美味しいし、別にベジタリアンに非は無いのだけれど、ココロに付きまとって離れないコレジャナイ感。
お互いそのあたりの苦労を知っている件のアドミンはいつも「今回もお食事楽しんでってくださいねー!」と満面の笑みで言うのだが… いつかしばいたる。