プロのお作法

今となってはずいぶん前のこと。ある夜、シャワーを浴びて出るときにお湯が止まらなくなった。なんかこう、水量を調節するノブが滑る感じ。でも少し力入れて回したら止まったので、きっとノブの中のプラスチック部品か何かが劣化して滑ってんだろ、くらいに思って翌日近所の巨大ホームセンターで部品を買ってきた。

ところが、ノブのネジがすごくヘンなネジでウチにある工具では回せないことが判明。泣く泣く、ときどきお世話になってるPlumber、要は水道屋さんに来てもらったのが壊れてから二日後の朝。築何十年も経っているボロ家のコンドミニアムのこと、水道系のトラブルは半年に一度くらいはあるので、今度も大したことないと思っていた、その時は。

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Plumberが言うには中の部品が壊れてるとのこと。半信半疑だったのだが、とりあえずノブを外して確認したところ、やっぱり中の部品(カートリッジというらしい)の問題であることが判明。さすがプロ。疑ってごめん。

つづけてPlumberが言うには、カートリッジの不具合の場合、水を止めないと直せないと。へー… って、オイオイ、ウチはコンドミニアムだから、メンテナンス会社に連絡して日時を決めて止めてもらわなきゃいけないじゃん。もっとも、そのこと自体は同じコンドでリモデルしているお宅があるときには必ずあることなので、めんどくさいな、くらいにしか思わなかった、その時は。

ところが何を思ったか、Plumberの職人さん(ちなみに職人さんとマネージャーの二人で来た)がその壊れたカートリッジをちょっといじったものだからさあ大変。どうやってもシャワーからの水が止まらなくなってしまった。で、マネージャーが文字通り青い顔になって、「風阿弥っ!急いでメンテ会社に電話して緊急で水止めてもらって!」ということに。全然プロじゃねーな、オイ。

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しょうがないので、大急ぎでメンテ会社に電話。コロナ禍で在宅勤務全盛の折も折なので繋がるかどうかすごく不安だったけど、奇跡的に電話に出てくれて、しかるべき担当の方に繋いでもらえた。神に感謝。

さらにもっと奇跡的なことに、みんな在宅で待機中にも関わらずウチの建物のメンテ担当サービスマンがすぐ来てくれることに。神に感謝。

ほどなく本当にサービスの人が来て(実は信じてなかったオレ 笑)曰く、「建物の半分ほど断水するので、オマエ今から一軒一軒ノックして伝えて回れ!」とのこと。

「は?今なんつった?」
「一軒一軒回るんだよ」
「僕がですか?」
「そうだよ、さっきからそう言ってるだろ」

オイオイ、マジかよ。でも確かにいつもだったら二・三日前に断水の通知がドアに挟まってるけど、抜き打ちだとそんな余裕は無いわな...

ってことで、行ったよ一軒ずつ。でも、半分くらいかな、ドア開けてくれたの。他は留守(それもまだまだリモートワークの多いこのご時世ではヘンなハナシ)もしくは居留守(笑)。話ができた人たちには、Emergencyのため間もなく水が止まること、大体15分くらいで復旧すること、迷惑をおかけして申し訳ないこと、等々を決死の思いでエーゴで伝えた。お陰で、後半はだんだん滑らかに言えるようになっていた。

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建物の元栓を閉めたら水はすぐ止まったのだが、なかなかお湯が止まらない。サービスの人は一旦帰っちゃったので(帰るなよ、この一大事に)、またメンテ会社に電話して、担当に繋いで...っていう手順を繰り返し、ようやくサービスの人のケータイに電話したころにはやっとお湯も止まっていた。この間約40分くらい。どこが「15分で復旧」なんだか。

水とお湯が止まった後、カートリッジの交換はものの数分で終了。オイオイ、このためにこんだけ大騒ぎしたのかよ。で、水とお湯の元栓を元に戻してめでたく全復旧。結局全部で1時間ちょっとかかったような。最後にPlumberのマネージャーが言うに、「オレはヤツ(=相方の職人のこと)に言ったんだよ、カートリッジに触っちゃダメだって。アイツも年取ったなぁ。」だって。

最近DIYで家の修繕を始めた友達曰く、「失敗しても最後は信頼できるプロに頼めばいいから」。そのへんが、プロがモノを壊しにくるアメリカとは決定的に違うところだな。